忍者ブログ
スクエニなど。ネタバレ注意! トップへは↓のリンクからお戻りいただけます。
[22]  [21]  [20]  [19]  [18]  [17]  [16]  [15]  [14]  [13]  [12
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

Teardrop Crystal


色とりどりに輝く、大きな大きな螺旋のお城。
昔絵本で見た、ロマンチックな童話のお城より、ずっと綺麗だった。
なのに、この建物全体に、死の風が吹きすさんでいる。
なんて、残酷なまでに美しい奈落なのだろう。
あたし達はしばらく、煌きの都市を呆然と眺めていた。





神騎くんの家のポストに日記を入れたあと、あたしはドミナの町をぶらぶらしていた。
ふと、教会に立ち寄ると、ボイド警部に会った。
何でも彼は、ジオにある廃屋の宝石店を調べに行くらしい。
暇だったのでついていったが、その宝石店がまさか、アレックスの店だとは思わなかった。
いつのまにか夜逃げでもしたのかと思っていると、どうやらだいぶ前から廃屋だとか。
おかしいと思いつつも扉を開けた。
確かに、蝶番が妙な音を立てているし、中の空気は澱んでいる。
恐る恐る中に入ってみた。
綺麗にディスプレイされていたアクセサリーはバラバラになってあたりに散乱し、天井には蜘蛛の巣があちこちに出来ている。
「なんなのよ、コレは・・・」
絶句して、しばらくあたりを眺め、店内をぐるりと回ってみる。ガラスの破片が足元でじゃりじゃりと鳴った。
人がいた形跡は皆無。
カウンターの奥を覗いたが、優しそうな眼鏡の店員の姿はどこにも見当たらなかった。
ふと、後ろを見るとボイド警部の姿が無い。
あんにゃろう、ビビッて逃げたのか!?うら若き乙女をこんな小汚い店に放り込んでおいて!!と思って、扉を開けようとすると、店内に入ってきた誰かとぶつかった。
「お姉さま!お久しぶりです!」
聞き覚えのある柔らかな、可愛らしい声がした。
しばらく会ってない珠魅の姫、真珠姫だった。
後から続いて、真珠姫のパートナーである、瑠璃が入ってくる。
彼らの無事を喜び、話を聞くと、どうやらこの宝石店、時間が歪んでいるのか何なのか、周りの人間には廃屋に見えるらしい。
彼らと共に、店内を調べていると、ふと、大きな宝石箱が目に入った。
この箱だけが、前に店で見たものと、寸分も変わらない。
突如、私達はその箱の中に呼び込まれた。



そこから後は、怒涛の展開としかいえない。
宝石箱の中から起き上がった蛍姫が、真珠姫の中に呼びかけて、レディパールを呼び出した。
レディパールが話してくれた真相は、ある程度は予想していたけれども、やはりショッキングな内容だった。
蛍姫を連れ出したのも、レディパールを傷つけたのも、最近の珠魅狩りも、蛍姫の騎士、アレクサンドルが起こしたことだった。
しかし、あたしには彼の行動が、一概に悪いとは絶対に言えない。
彼は、蛍姫を救いたかったのだ。
だから、裏切り者の汚名をかぶってまで蛍姫を珠魅の都市から連れ出し、手を血で染めながらも、蛍姫の核を癒したかったのだ。
そして何より、蛍姫の命を貪って生きる、珠魅が、自分も含めて許せなかったのだろう。
蛍姫は話を聞いた後、玉石の王杓を託して、消えてしまった。レディパールによれば、アレクサンドルに呼び出されたのかもしれないということだ。
あたしは、瑠璃を連れて煌きの都市へ向かうことにした。
珠魅としては歳若い彼に、もっと他の珠魅に関らせてあげたかったのだ。





人が通らないような道を何日も通って、私達はその、煌びやかな廃墟に入り込んだ。
「ここが珠魅の・・・」
瑠璃が黙って周囲に視線を巡らせる。
彼が夢見ていた場所。彼は今、どんな思いでこの建物を眺めているのだろう。
「進みましょう。」
瑠璃は黙って頷いて、あたしについてきた。



「ここで、ルーベンスやエメロードたちが暮らしていたのね。」
「ああ・・・」
ここに来るまで、彼は何かを、ぼんやり考えている。
まだるっこしい。あたしがそのことを指摘したら、瑠璃は「ごめん。」とちょっと笑い、そしてポツリと話し始めた。
「なあ、珠魅は本当に生まれるべきだったのか?」
いつもの彼とは違う、おとなしい声音だった。
あたしはちらりと彼を見る。瑠璃は、少しうつむいていて、表情がよく見えない。
でも、剣の柄をぎゅっと握りなおしたのはわかった。
「男女揃って子供をなせるわけでもない。
不老長寿だが、涙が無ければ、ろくに延命も出来ない。
オレは珠魅が死絶えるべきだとは思わない。そうだとしても、信じたくない。
でも、レディパールの話を聞いて、昔の珠魅たちのことを知って、そして、蛍姫の様子を見て・・・
麗しき友愛の種族なんていいながら、何て醜く生きながらえているんだろうって。」
「あんた、アホねー。」
あたしの言葉に、瑠璃ははっと頭を上げた。
短気なクセは直ってないなぁ。
でも、そういう瑠璃の方が、元気があっていつも通りで、あたしは気が楽だ。
「美しく生きるなんてありえないのよ。
美しく生きるんじゃなくて、美しく生きてるように努力してんのよ。
皆必死で生きてるんだから。
それに何?生まれるべき、死ぬべきって。冗談じゃないわ。
そんな理由、誰も持って生まれて死んでくわけじゃないわよ。生きるのにも死ぬのにも、理由なんかいらないじゃない。
どうしても欲しければ作ればいいのよ!!」
視界の端で、瑠璃を見ると、不思議そうな顔でこちらを見てくる。
気恥ずかしくて、思わず早足になった。
「アレクサンドルは、珠魅は人形だなんて吐き捨てたけど、あたしはそうは思わないわ。
あたしが会った珠魅は皆、心を持ってたもの。
アンタや真珠ちゃんたちはもちろん、アレクサンドルもね。
第一、珠魅が涙を失ったのは、他の種族が珠魅を狩ったからじゃないの。
そういうやつらこそ、欲望に操られた人形だっての!
・・・ん?」
いきなり目の前に、深い青色の門が現れた。
「これ、扉??なにこれ、開かないじゃない。」
「台座がある・・・おい羅樹華、さっき拾った宝石をはめるんじゃないか?」
「くそ・・・うっとうしい防犯システムね・・・」
あたしはせっかく拾った宝石を、台座に次々と載せていく。
瑠璃は黙って見ていたが、おもむろに口を開いた。
「・・・ありがとう、羅樹華。真珠もそれを聞いたら、同じことを言うと思う。」
「お礼なんていいわよ、水臭いわね。
あたしが言いたいのは、アンタたちは自分を責めすぎるなってこと!!
責めたいなら、珠魅をこんな状況に追いやった他の種族を責めて、自分達は未来に繋げなさい!」
台座に宝石を置くと、扉がゆっくりと開き始めた。
「やっぱり宝石が鍵だったのか、よし、行こう。」
瑠璃に促され、あたしは先に扉の中に入ろうとした。
「・・・ちょっと待って・・・」
あたしの言葉に、後ろに続こうとした瑠璃の足が止まる。
あたしは瑠璃のほうに振り返った。
「・・・?どうした?」
「・・・よく考えたら、あたし達人間は、悪く無いじゃん。」
「ハァ??」
瑠璃がぽかんとこちらを見た。
背後に、気配。
瑠璃の目つきが一瞬にして変わる。
「オイ、後ろ!!」
「夢想阿修羅拳ッッッ!!!!!!!」
開いた扉から飛び出してきたモンスターを、あたしは問答無用で殴りつけた。
化け物はぶにゅ3体ぐらいの距離を飛んで、何回かバウンドして動かなくなった。
剣の柄に手を置いたまま、呆然と立ち尽くす瑠璃の前で、あたしは手をはたきながらキレまくる。
「そーよ!!考えたら現在の人間は全くもって悪くないじゃない!!
過去に、無責任に戦争起こした馬鹿どものせいだわ!!
何であたし達が奴らの尻拭いをしてやらなきゃなんないんだっつーの!!!
世界征服とかするんだったら、きっちりやって済まさんかい!!
計画性も将来性も才能も器量も無いくせに、夢だけは無駄にビックだから迷惑かけんのよ!!
ああああああもう!!アホらしい!!
炎帝とか、不死皇帝とか、今現在いやがったら、きっちり落とし前つけさせてやるんだから!!
ファ・ディール中引き回した上に、迷惑かけた人たちに土下座させて賠償金出させて事態を収拾させた後に、羅樹華ちゃん式奈落めぐりのスペシャルコースよ!!
不死皇帝とか、不死のクセに死んでるんじゃないわよ!!死ね!!!」
地団駄踏んだら、足の裏が痛くなった。
黙ってあたしを見ていた瑠璃が、ぷっと吹き出す。
「お前・・・」
「何よ」
「結構色々考えてるんだな。」
「あったりまえじゃない。馬鹿どもみたいになるのはごめんよ。」
「もしかして、お前が世界征服したら、いいんじゃないか?」
「あら、見る目あるじゃない。でも、めんどくさいから、また今度ね。」
そう言うと、瑠璃はまた笑った。
私もつられてちょっと笑った後、門をくぐった。



同じような門が何個かあり、入る前に同じモンスターが襲いかかってきた。
たしか、名前はジュエルビースト。
これでサンドラが、この都市にいるのは間違いない。
あたしたちは最上階の玉石の座で、彼女、いや、アレクサンドルと対峙した。
そして宝石王とも。
彼は体内に入れたものを融合させる力があるらしい。
「これで999個・・・」
そう言って彼が飲み込んだのは、見覚えのある大粒の真珠だった。
「貴様ら!!よくも真珠を!!!」
瑠璃が吼えて剣を抜く。
そのあいだにも、宝石王は姿をどんどん変えていった。
あたしも宝石王に飛びかかる。

「たかが1000個の核で、蛍姫の命が救えるのよ。安いものでしょう?」
アレクサンドルはそう言った。
彼は、玉石の座で倒れている蛍姫を、庇うようにして立っている。
騎士としては、なるほど、適任ね。
宝石王が魔法の力を集約して、光を破裂させる。
光は、瑠璃のマントをかすっただけで焦がした。
あたしは後ろに回りこんで、宝石王に蹴りを入れる。
あたしのキックでも、宝石王はよろめいただけだった。それでも集中力が切れたのか、光は消え失せる。
強化された宝石王には、直接攻撃は効きにくいようだ。
あたしはロッドを取り出して、構えた。
「あんた達には同情してあげるわ!
必ずしもあんた達が悪いわけでもないし、珠魅にも非はあるにはあった。
でも!!あたしの大切な人たちを奪ったことだけは許せないわ!!
たった1000の命?ふざけてんじゃないわよ!!」
アレクサンドルが、あたしを冷たく一瞥する。
あたしも負けじと睨みつけた。
「大事な人を傷つけられたら、ぶちきれるのは人として当たり前よ!!
アンタだって同じでしょうに!!
ってなわけで、羅樹華さまは今回手加減しないわよ!!」
ロッドを一振りすると、火炎と冷気が蛇のようにロッドに巻きつく。
炎と氷の力をまとったロッドで、宝石王を叩きつけた。
宝石王はさすがに吹っ飛ばされたが、壁を背にして再び魔法の力を溜めはじめる。
鋭く尖った尾が攻撃してくるので、近づくこともままならない。
宝石王が光を放とうとした瞬間、あたしは瑠璃に向かって叫んだ。
瑠璃は目だけで頷くと、真正面から宝石王に突進した。
あたしは即座にフルートを吹いた。
シェイドの力を宿したそれは、軽く奏でただけで魔法を発動できる。
闇が、宝石王をあっという間に包んだ。
宝石王が放つ光を相殺するだけでなく、闇で煙幕を作る効果もある。
瑠璃は勢いを殺すことなく、闇の中へ突っ込んでいく。。
闇の中から、一筋の青い光が現れたかと思うと、それは一瞬扇形に変形して消えた。
瑠璃のレーザーブレードだ。
闇が拡散し、瑠璃と、元の姿に戻った宝石王が現れる。
「力が足りない・・・あと一つ・・・」
宝石王が喘ぐ。
「王!!私の核を!!勝って、姫に涙を!!」
アレクサンドルは一瞬のためらいも無く、自分の核を外し、宝石王に核を託して砕け散った。
宝石王が核を受け取って飲み込んだとき、あたりは光に包まれた。



目を開くと、あたりは見たことも無い妙な場所。
光が絡まりあい、小さな煌きがあたりに散乱している。
まるで、宇宙。
宝石王の力が、空間自体を歪ませたのだろう。
大きな気配を感じて振り向けば、目の前に不細工な鯨のような、異形の化け物が現れた。
1000個の力を体内に取り込んだ、宝石王だ。
宝石王は体を大きく震わせて、あたしたちを撥ね飛ばすだけでなく、前の形態のようにチャージする時間もなく、光を乱発してくる。
前の戦いでこちらは相当消耗している。
これ以上時間をかけても、あたしたちは不利になる一方だ。
「瑠璃!時間を稼いで、あいつをひきつけて!!」
それだけあたしは叫ぶと、目を閉じて集中した。
魔法の力を練りこんだ杖を媒介にして、精霊達に呼びかける。
精霊全てに呼びかけるのは至難の業だ。こればかりは時間と集中力との勝負。
あたしは瑠璃を信じた。あたしか彼がやられるかなんて、考えている暇は無い。
マナの力がロッドを震わせた。
あたしは精霊を一気に召喚して、その力を解き放つ。
精霊達が独特の音階を奏でて、周囲のマナを刺激した。
爆発的なマナの力が辺りを飛び交い、宝石王の体をあっさりと吹き飛ばす。
宝石王が七色に輝きながら、砕け散った。



気がつけば、玉石の座に戻っていた。
瑠璃は、ぐったりと倒れている蛍姫を見つめて、地面に拳を叩きつける。
「畜生・・・!!残った珠魅は、オレと蛍姫だけか・・・!!」
その様子を見て、何故か胸が締め付けられるように苦しくなった。
同時に、真珠姫や、レディパールや、今まで関った珠魅たちの顔が浮かぶ。
と思うと、いきなり視界がぼやけた。
瑠璃が何か叫ぶ。
声を理解する前に、あたしの意識は闇に落ちた。





目覚めたとき、多くの珠魅に囲まれていた。
懐かしい顔が何人か見える。エメロード、ルーベンス、ディアナ、そして、核が元通りになっている蛍姫。
彼らが何か話しかけてきたが、頭がぼんやりしてよくわからない。
周りを見てみると、瑠璃と真珠の姿が見えない。
彼らのことを聞くと、私の家に向かったという。何で??
とにかく、私は急いで、彼らの後を追った。



懐かしい、黄色い屋根が見える。
雲の間から朝日が漏れて、若草たちを照らす。
風が爽やかに吹いてきて、とても気持ちいい。
風に揺れた草が、朝日を反射して、キラキラ光っていた。
あれ?うちってこんなに綺麗だっけ??
そんなことを思いながら、玄関のほうを見ると、瑠璃と真珠、バドとコロナが立っていた。
みんな、驚いたような顔でこちらを見ている。
その様子が、ちょっと可笑しかった。
あたしは立ち止まって、皆の顔を見る。
「ただいま。」
そう言って、一瞬の沈黙の後、バド、続いてコロナが泣きながら抱きついてきた。
真珠姫はなんか照れてるし、瑠璃くんも見たこと無いくらい穏やかな表情をしている。

ふと、呼ばれたような気がして、泣いている小さい双子をなだめながら振り返る。
赤い頭巾の少年が、朗らかに笑いながらあたしに手を振ってきた。
彼は、前に連れてた赤い鎧の獣人と、隣に見慣れない綺麗な獣人の女性を連れていた。
あれ?なんであの人、あんな泥だらけなんだろう。ズボンの端っこ焦げてるし。
また無茶してきたのかな。しょうがないな~
「おはよー、神騎くん!」
あたしも笑いかけて手を振った。

そうだ、このまま皆で朝食でも食べようか。
あたし、神騎くんたちに、話したいことたくさんあるんだ。
この人数じゃ家に入らないから、トレントのところで立食パーティみたいにして。
やっぱり、平和が一番よね。
バドの鼻水を吹いてやりながら、あたしはしみじみと思った。
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
忍者ブログ [PR]